心のケアとは?

 

■『心のケア』の必要性
障がいの種類を問わず、『心のケア』の必要性がようやく最近認識されてきました。さまざまな問題が山積みしている今の世の中、現代人の心の疲れを問題にして「癒し」が注目されていますが、 障がいのない人でさえ必要な癒しは、ハンディがあるために生きにくくなっている障がいのある人たちには、なおのこと必要といっていいでしょう。どんな種類の障がいがある人にも、『心のケア』が大切であるということは当然ですが、
援助する側から考えると、今、成人障がい者に関わる仕事をする人が、たぶん一番困っているのは 自閉症の人ではないでしょうか。
そこで、ここでは、自閉症の人を中心に『心のケア』について述べようと思います。。

■自閉症の人との空しい「やり-とり」
よく「今、何時?」と質問する自閉症の人がいます。職員が丁寧に「今○○時ですよ。」と何度答えても、質問は繰り返されます。援助者は空しくなります。

援助者の側に、助けになりたいという気持ちがあっても、何がして欲しいのかわからない。何が本当の助けになるのかが見えてこない。気持ちを感じとりたくてもよくわからない。こんな時、私たちは、関わることが空しくなり、元気を失い、時にはイライラし、それを相手にぶつけたくなります。
相手の気持ちが見えないと(相手との気持ちの交流がないと)私たちは誰でも、相手にやさしい気持ちを持てなくなるのです。

■私たちの追及する『心のケア』

私たちが考える『心のケア』では、障がいのある人と援助する人が、気持ちの交流を深めることでお互いが理解しあい、意味のある「やり-とり」が深まり、いい関係になることをめざします。
「今何時?」と繰り返しされる質問に、何度も答えて空しさを感じた時、その空しいと感じる自分の感覚を大事にしましょう。空しいという感覚は、「やり-とり」がうまくいっていない。ということを教えてくれているのです。すれちがっているから、噛み合わないから、空しいと感じるのは当然なのです。「今何時?」のように繰り返す質問の背後にはどんな気持ちがあるのでしょうか?
その気持ちにつきあうことができれば、かみ合う「やり-とり」になるはずです。
そうすると、障がいのある人は、安心して、より自分を表現できるようになり、援助者にとってわかりやすい人になっていきます。
お互いの相乗効果で空しい「やりーとり」がどんどん意味のある「やりーとり」に変わり、障がいのある人と援助する人の気持ちが通い合い、いい関係になります。
職員とのいい関係が出来ていくと、問題とされている行動障害は減っていきます。もともと行動障害それ自体が、言葉に表せない障害のある人の苦しい叫びが体で表現されていると考えられますので、心の交流が深まり、わかってくれる援助者に支えられ、人への信頼を深め、甘え、人に助けを求めることが旨くなれば、行動障害と言われるようなやり方をする必要がなくなるのです。

■『心のケア』の援助技術  体を通して「やりーとり」をする

では、実際に『心のケア』はどのようにするのでしょうか?パニックなどの緊急事態にはどう対応したらいいのでしょうか?単に「気持ちを大切にして」という精神論ではどうにもならないでしょう。
そこには、理論と技術が必要です。特に大事なのは「やり-とり」の技術です。
自閉症の人の言葉や行動に惑わされず、空しくないやりとりをするためには、体を通して直接感じ取る技術が必要です。言葉や行動からは、気持ちが見えにくい自閉症の人でも、体にしっかり関わることで、体の出す反応から彼等の気持ちをキャッチすることができるのです。彼等は、苦しさを泣くかわりに暴れることで表現したり、不安な気持ちを同じ言葉を繰り返すことで解消しようとしたり…といろいろな彼等特有のやり方をします。
私たちが、彼等の言動を翻訳し、彼等の本当に言いたいことを受け止め、応えることができれば、意味のある深い「やり-とり」ができます。

■援助技術の習得には練習が必要
理屈が分かっただけでは泳ぎが習得できないのと同じように、体を通して相手と「やり-とり」する技術も実際の練習が必要です。
練習をすれば誰でもできるようになります。実際に体につきあいながら、気持ちを感じ取っていく練習を重ねると、日常的ないろいろな行動が一つの表現として見えてきます。
たとえば、「今何時?」などと、何度も繰り返し聞いてくるときは、たいてい何か不安になっている時である。とか、衝動的に何かに「はしる」ような行動は、たいていやりたくてやっている。のでなく、何かに駆り立てられて、やらずにはいられないからやってしまっているだけで、本人としては止めてもらいたがっているとか…。そうしたことが、体を通して「やりーとり」することにたけてくると、見えやすくなるのです。

■『心のケア』の実際(パニックへの対応)
体にしっかり関わることで、気持ちが見えたら、どう対応すればいいかがわかってきます。ここでは基本中の基本としてパニックの時の対応について少しだけ触れます。
パニックは我慢していた気持ちの爆発ですから、そうせざるをえない不安、イライラ、怒りなどの気持ちを共感的に受けとめながら、暴れるなどの行動は、しっかり止めます。 この時の注意として、本人はもちろん援助者も、傷つくことが絶対にないようにすることが大事です。誰かが傷つくと、その事でまた自分を責めて苦しくなるので、かえって落ち着けなくなってしまいます。そのためにも、援助者の人数の確保が必要になります。そして少し時間はかかりますが(初回で1~2時間)、落ち着くまでつきあいます。
私たちは誰でも、自分の辛さを、誰かに聞いてもらって思う存分泣けたら、新しい一歩を踏み出せるでしょう。障がいのある人は泣けない人がほとんどです。泣くかわりに暴れているのだと思って、暴れに(体の泣きに)十分つきあってあげてください。そして少しずつ暴れる以外の表現方法を教えてあげればいいのです。

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☆☆ 優&遊からひとこと ☆☆
私たちの『心のケア』のほんの一部を紹介させていただきました。
私たちの言う『心のケア』の理論も技術も、決して難しくはありません。難しくないからといって、うすっぺらということではありません。 本質に近ければ近いほど物事はシンプルなのです。とてもシンプルですから誰にでも分かるし、誰にでもできます。
ただし、繰り返しになりますが、本を読むだけでは泳げるようにならないのと同じで、実際に練習が必要です。援助する者として実際にやってみるだけでなく、同じ事を自分がされた時にどんな感じがするかなど、自分のこととして体験することが『心のケア』の理解を深め、技術を身につける近道なのです

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